Creme Tangerine

アクセスカウンタ

zoom RSS J.ケッチャム「隣の家の少女」

<<   作成日時 : 2008/02/21 01:01   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 20 / トラックバック 0 / コメント 0

今期のテレビドラマはどの局も視聴率が伸び悩んでいます。出演者の
せいというより、脚本と演出がダメダメだからだよなぁ…と文句を言いつつ
見ていたのですが…







しかし、そんな私のしょーもない愚痴も、J.ケッチャムの
「隣の家の少女」(扶桑社ミステリー)を読んだとたん、

もうどうでもよくなりました。

ストーリーがぐだぐだでなかなか先に進まなかろうが、冬なのに半ズボン
だろうが、主人公のキャラがありえなさすぎだろうが、

怒る気になりません。

この小説の悲惨な結末に比べれば、別にいいじゃん…と。



※ここから先は小説のネタバレがあります。

1958年、夏。11歳のデイヴィッドは、ザリガニ獲りに行った小川で美しい年上の少女、メグと出会う。両親を事故で失ったメグは、妹のスーザンと一緒にデイヴィッドの家の隣りにある、チャンドラー家に引き取られたのだった。チャンドラー家は3人の男の子とその母親のルースの4人家族。美しいメグの登場に心躍らせたデイヴィッドだったが、ある日ルースが姉妹を折檻しているところを目にしてしまう。最初はショックを受けたデイヴィッドだったが、その感覚はやがて麻痺し、次第にエスカレートしていくルースの折檻を、ただ見ているだけだった。そしてルースの折檻はメグを地下のシェルターに監禁するまでに至り…

この本に関する評判は前から聞いていたし、文庫のオビに
「最悪なことがおこります」
と書かれてあったので(不幸の手紙か!)、ある程度の覚悟はしていたの
ですが、ページをめくるたびに目を覆うほどのひどいことが起こり続けるので、
どこからが「最悪なこと」なのかわからなくなりました。とにかく読んでて
気が滅入りました。
もうカンベンしてー!!と叫びたくなるくらい。

もちろん、普通に考えたら究極の最悪はメグの死なのでしょうけど、死に至る
直前にメグがルースたちにされたことを思うと、死によってやっとメグは解放
されたのだ、と安堵してしまいそうになります。もちろん、死んでしまうよりは
生き残れるほうが、メグにとってもスーザンにとってもよかったに違いないと
思いますが。

メグを死に至らしめた支配者、監禁された地下室に充満する狂気の源は
ルースでした。作中では、何が彼女をそこまで駆り立てたのかは具体的に
出てきませんが、終盤の彼女のセリフからなんとなく想像できるものは
あります。ルースがやったことは絶対に許されるものではありませんが、
彼女も気の毒な人間なのかもしれません。

ルースも恐ろしいですが、狂人はある意味ホラー小説のお約束でもあります。
それ以上に恐ろしいのはルースと一緒になってメグに虐待を加え、犯し、体だけ
でなく精神まで破壊してしまった、ルースの息子と近所の子供たちです。彼らに
とってメグは気晴らしの道具にしか過ぎないのですから。自分と同じ人間だと
思ってないのです。彼らはルースのように狂ってしまったわけでもないのに。
メグを殴り、辱めた後、子供たちは家に帰って両親たちと温かい夕食を囲み、
テレビを見て笑うのです。事件の後、自分の子供が何をしたか知った両親は
どう思ったことでしょう。デイヴィッドの父親がデイヴィッドから逃げるように去って
いったのもわかります。彼の息子はただ見ていただけだったけれど、父親は
息子に「男が女を殴ること」を肯定してしまったのですから。

小説の主人公がデイヴィッドなので、自然デイヴィッドの視点にそって読むことに
なります。メグを傷つける(そんな生易しいものではないけど)他の子供たちと
違って、デイヴィッドは唯一罪の意識を感じる善良な子供なのですが、それゆえに
彼がメグたちをなかなか助けようとしないのには読んでてとてもイライラさせられ
ました。クライマックスでデイヴィッドはやっと重い腰を上げますが、その結果…。
自分の犯した罪を理解し、罰を受け入れられるのは素晴らしいことだと思うの
ですが、彼の場合は背負わされた十字架があまりに重すぎます。

実は読み始めたとき、私は事件のショックで精神が歪んでしまったデイヴィッド
が、大人になってから事件の関係者に復讐するとか、似たような事件を起こして
しまうのではないかと想像していたのですが、この小説はそんなふざけたもの
ではありませんでした。それどころか、エピローグでデイヴィッドは自分の
十字架を更に重くするものを発見してしまいます。デイヴィッドは私が思って
いた以上に善良でした。反省。

巻末にスティーブン・キングの長い解説(4章もある!)がついているのですが、
ケッチャムを絶賛する一方で他の作家をこきおろすキングの辛口な文章は
なかなか面白かったです。文中に出てきた何冊かの本はぜひ読んでみたいと
思ったのですが、果たして入手できるかどうか…。あと、キングも書いてました
が、アメリカのペーパーバッグ版の表紙(顔がガイコツのチアリーダー)は本の
内容とまったくマッチしてなくて、自分の本をこんな表紙で売られてしまった
ケッチャムが気の毒になりました。

訳者あとがきに
“最近、ローティーンによる凶悪な犯罪が増えている(中略)『隣の家の少女』は、
そんな世紀末の日本で読まれるべき、重要な小説なのである”

とありました。確かに、小説を読んでる最中、実際に日本で起きたおぞましい
事件が何度も頭をよぎりました。でも、その事件を起こしたのはルースでは
ありません。ルースによって狂気を支配された子供たちでもありません。小説の
中で起きた出来事はおぞましく、気の滅入ることの連続でした。しかし、現実は
もっと恐ろしくて救いようのないことが起きているのです。この小説を読んで一番
気が滅入ることは、この事実なのかもしれません。



隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)
隣の家の少女 (扶桑社ミステリー)

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 20
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
J.ケッチャム「隣の家の少女」 Creme Tangerine/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる